合同会社と株式会社どっちがいい?ひとりで法人化するときの費用・税金・手間の違い【2026】
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個人事業から法人化するとき、最初に決めるのが会社の形です。ひとりで作る会社の選択肢は、事実上合同会社か株式会社かの2つ。どちらも有限責任で、どちらも1人で作れます。
違いが出るのは4か所です。設立費用、毎年の税金、設立後の手間、取引先からの見え方。この記事はこの4つを、法令と公的機関の資料で確認できた数字だけで並べます。どの設立サービスを使うかは別の話なので、freee会社設立 vs マネーフォワード クラウド会社設立に分けました。
結論
- 設立費用は合同会社が10万5,000円以上安い(電子定款なら合同会社は6万円)
- 法人税・住民税・消費税・社会保険はどちらでも同じ
- 株式会社にだけ決算公告と役員任期の登記が毎年・数年ごとに発生する
- 株式会社を選ぶ理由は「株で資金を集める」「会社ごと売る」「取引先が株式会社を求めている」のどれか
ひとりで作る場合の違いの一覧
先に全体を表にします。前提は、出資者は自分1人、資本金100万円未満、取締役会は置かない、電子定款。個人事業から法人化するときの、いちばんよくある形です。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 設立費用(法定の実費) | 6万円 | 16万5,000円+謄本代 |
| 定款の認証 | 不要 | 公証人の認証が必要 |
| 法人税・住民税の税率 | 同じ | 同じ |
| 社会保険 | 加入義務あり | 加入義務あり |
| 役員の任期 | 法律上の定めなし | 原則2年(定款で最長10年) |
| 決算公告 | 義務なし | 毎年必要 |
| 代表者の肩書(登記上) | 代表社員 | 代表取締役 |
| 株式による資金調達 | できない | できる |
| もう一方への変更 | 組織変更で株式会社になれる | 組織変更で合同会社になれる |
税金の行が「同じ」になっているのが、この比較のいちばん大事な結果です。法人化で税負担が変わるのは個人か法人かの違いであって、合同会社か株式会社かの違いではありません。
設立費用:差は10万5,000円
法務局と公証役場に払う実費だけを比べます。設立サービスの手数料は含みません。
| 費目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 6万円 | 15万円 |
| 定款認証手数料 | 不要 | 1万5,000円 |
| 定款の謄本代 | 不要 | 数千円 |
| 定款の印紙代(電子定款) | 0円 | 0円 |
| 合計 | 6万円 | 16万5,000円+謄本代 |
登録免許税は資本金の0.7%で、合同会社は6万円、株式会社は15万円が最低額です。最低額を超えるのは、合同会社なら資本金がおよそ857万円を超えたとき、株式会社ならおよそ2,143万円を超えたときなので、ひとりで作る会社ならほぼ最低額のままです。
合同会社の定款は公証人の認証が要りません。会社法30条で認証が効力の条件になっているのは株式会社の定款だけで、合同会社は定款を作れば認証なしで登記に進めます。手数料がかからないだけでなく、公証役場とのやりとりが1工程まるごと消えるのが実務上の差です。
株式会社の定款認証手数料は資本金と条件で変わる
| 資本金 | 定款認証手数料 |
|---|---|
| 100万円未満で下の3条件をすべて満たす | 1万5,000円 |
| 100万円未満(上記以外) | 3万円 |
| 100万円以上300万円未満 | 4万円 |
| 300万円以上 | 5万円 |
1万5,000円になる条件は、(1)発起人が全員個人で3人以下、(2)発起人が設立時の株式を全部引き受ける、(3)取締役会を置かないの3つです。2024年12月1日の改定で入った区分で、ひとりで作る株式会社は資本金を100万円未満にすれば普通に当てはまります。
資本金を100万円以上にすると、株式会社だけ手数料が上がります。資本金200万円なら株式会社は19万円+謄本代、合同会社は6万円のままで、差は13万円に広がります。
紙の定款にすると印紙代4万円
印紙税は紙の定款の原本にかかり、株式会社でも合同会社でも4万円です。電子定款は紙の文書ではないので印紙税がかかりません。電子定款を自分で作るには電子署名の環境が要りますが、設立サービスを使えば代行してもらえます。たとえばマネーフォワード クラウド会社設立は電子定款の作成が5,000円で、マネーフォワード クラウドの対象の有料プランを契約するとこの5,000円が無料になります。4万円の印紙代と比べれば、紙を選ぶ理由はほぼありません。
毎年の税金は同じ
法人化したあとの税金は、会社の形ではなく、資本金・所得・従業者数で決まります。
| 税・保険 | 決まり方 | ひとり会社の場合 |
|---|---|---|
| 法人税 | 資本金1億円以下の普通法人 | 年800万円以下の所得に15%、超える部分に23.2% |
| 法人住民税の均等割 | 資本金等の額と従業者数 | 標準税率で年7万円(道府県民税2万円+市町村民税5万円) |
| 消費税の免税 | 設立時の資本金・出資金が1,000万円未満か | 1,000万円以上なら1期目から課税事業者 |
| 健康保険・厚生年金 | 法人の事業所は加入義務 | 社長1人だけでも加入 |
均等割は赤字でもかかります。東京都主税局は「均等割は、決算の状況にかかわらず、資本金等の額及び従業者の数に応じて課税されます」と案内しています。利益がゼロでも年7万円前後は出ていく固定費として、法人化の損益計算に入れておいてください。市町村民税は自治体が標準税率の1.2倍まで上乗せできるので、所在地によっては7万円を超えます。
消費税の「資本金1,000万円」の基準も、国税庁の説明では「資本金の額または出資の金額」で、株式会社の資本金にも合同会社の出資金にも同じように当てはまります。社会保険も、日本年金機構の説明では強制適用事業所は「株式会社などの法人の事業所(事業主のみの場合を含む)」で、合同会社も含まれます。
設立後の手間:株式会社にだけある2つの義務
設立費用の差は一度きりですが、こちらは会社がある限り続きます。
役員の任期と、任期ごとの登記
株式会社の取締役の任期は原則2年です(会社法332条1項)。公開会社でない株式会社(発行する株式の全部に譲渡制限を付けた会社)は、定款で最長10年まで延ばせます(同条2項)。
任期が来たら、同じ人が続ける場合でも役員変更の登記が要ります。登録免許税は資本金1億円以下の会社なら1件1万円です。
| 定款の任期 | 10年間の重任登記 | 登録免許税の合計 |
|---|---|---|
| 2年(原則のまま) | 5回 | 5万円 |
| 10年(最長に伸長) | 1回 | 1万円 |
金額より怖いのは登記を忘れることです。登記を怠ると100万円以下の過料の対象になります(会社法976条1号)。さらに、最後の登記から12年たった株式会社は休眠会社として扱われ、法務大臣の公告から2か月以内に届出をしないと解散したものとみなされます(会社法472条)。ひとりで回している会社ほど、10年後の期限は忘れやすくなります。
合同会社の業務執行社員には、法律上の任期の定めがありません。社長が1人のまま変わらなければ、役員の登記は設立のときだけで済みます。
決算公告
株式会社は、定時株主総会のあと遅滞なく貸借対照表を公告しなければなりません(会社法440条1項)。公告方法を定款で決めていなければ官報になります(会社法939条4項)。
官報の掲載料は、決算公告のような枠付の公告で1枠40,882円(税込)、2枠で81,765円です(2026年11月時点、東京都・官報サービスセンターの掲載料金の案内)。毎年かかるので、10年なら2枠で約82万円になります。
ただし、官報の掲載料を払わずに済む方法が法律に用意されています。公告方法が官報か新聞の会社は、貸借対照表を自社サイトなどで5年間公開し続けることで決算公告に代えられます(会社法440条3項)。この場合、公開するページの情報を登記します(会社法911条3項26号)。設立時に登記事項に入れておけば、毎年やることは決算書のPDFを差し替えるだけです。
合同会社には決算公告の規定がありません。会社法440条は株式会社の条文で、合同会社には同じ義務が置かれていません。
10年で見た株式会社の追加コスト
| 費目 | 官報で公告する場合 | 自社サイトで公開する場合 |
|---|---|---|
| 設立時の差額 | 10万5,000円+謄本代 | 10万5,000円+謄本代 |
| 重任登記(任期10年) | 1万円 | 1万円 |
| 決算公告(2枠×10年) | 約82万円 | 0円 |
| 10年の追加コスト | 約93万円 | 約12万円 |
株式会社の追加コストは、決算公告をどう出すかでほぼ決まるということが分かります。自社サイトで公開して任期を10年にしておけば、合同会社との差は10年で十数万円です。お金の差だけで合同会社を選ぶほどの金額ではなく、手間と期限管理をどう見るかの問題になります。
取引先からの見え方
ここは数字で比べられない項目です。そのうえで、確認できる事実を置いておきます。
法務省の登記統計によると、2025年の設立登記は株式会社100,165件、合同会社45,161件でした。合同会社は2023年40,751件、2024年41,774件と増えていて、新しく作られる会社のおよそ3社に1社が合同会社です。「合同会社という形を聞いたことがない」という相手は、以前より確実に減っています。
見え方の差が実際に出るのは、名前と肩書です。商号に「合同会社」が入り、代表者の登記上の肩書は「代表社員」になります。名刺や契約書でこの2つを見た相手が何を思うかは、業界と相手次第です。
図1・図2は、法務局が公開している設立登記申請書の記載例です。登記すべき事項の「資格」の欄が、合同会社では「代表社員」、株式会社では「代表取締役」になっています。
判断のしかたとして現実的なのは、いまの取引先と、これから取りたい取引先に直接聞くことです。取引先が株式会社であることを取引の条件にしているなら、それで決まります。条件になっていないなら、見え方は合同会社を避ける理由になりません。
株式会社にすべき3つのケース
ここまでの比較から、株式会社を選ぶ理由が残るのは次の3つです。
- 株で資金を集める予定がある:エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資は、株式を発行できる株式会社が前提です。合同会社は株式を発行できません。
- 会社ごと売る可能性がある:株式会社なら株式を譲渡して会社を引き渡せます。
- 取引先・業界が株式会社を求めている:上で書いたとおり、条件として確認できた場合です。
どれにも当てはまらない、たとえば受託開発・デザイン・コンサルティング・執筆などをひとりで請けている状態からの法人化なら、合同会社で困る場面は上の3つ以外にはほぼありません。
合同会社で始めて、あとから株式会社にする道
迷う理由が「将来、出資を受けるかもしれない」なら、合同会社で始めて必要になったときに株式会社へ変える方法があります。会社法上の組織変更です。
- 組織変更計画を作り、総社員の同意を得る(ひとり会社なら自分の同意)
- 官報に公告し、知れている債権者に個別に知らせる。異議を述べられる期間は1か月以上
- 効力発生日から2週間以内に、合同会社の解散の登記と株式会社の設立の登記を申請する
株式会社の設立登記の登録免許税は、組織変更の場合資本金の0.15%(3万円に満たなければ3万円)です。ほかに官報公告の掲載料などがかかり、期間は最低でも1か月を見ておく必要があります。
合同会社6万円で始めて、あとで組織変更に3万円+公告費などを払うのと、最初から株式会社で16万5,000円+謄本代を払うのとを比べると、株式会社になるかどうか分からない段階なら合同会社で始めるほうが損をしにくい計算です。逆に、出資を受けることがすでに決まっているなら、組織変更の1か月と手続きを省くために最初から株式会社にするほうが早いです。
決めたあとの進め方
- 会社の形を決める(この記事の内容)
- 資本金を決める。株式会社なら100万円未満で定款認証が1万5,000円。どちらの形でも1,000万円以上にすると1期目から消費税の課税事業者
- 本店の住所を決める。登記した住所は誰でも見られる情報になるので、自宅を出したくなければバーチャルオフィスを検討(バーチャルオフィス1の料金と向き不向き)
- 設立サービスで書類を作り、電子定款を選ぶ(サービスの選び方はfreee会社設立 vs マネーフォワード クラウド会社設立)
- 株式会社なら公証役場で定款認証、そのあと法務局へ登記申請(合同会社は認証なしで登記申請)
- 登記後に税務署・都道府県・市町村への届出、社会保険の加入、法人口座の開設
設立サービスはfreee・マネーフォワード・弥生のどれも合同会社と株式会社の両方に対応していて、実費の部分は上の表から動きません。選ぶ基準は設立後に使う会計ソフトです。会計ソフトの比較はひとり社長の会計ソフトおすすめ3選とfreee vs マネーフォワード クラウドにまとめています。
会社設立の書類を無料で作る(マネーフォワード)よくある質問
ひとりで会社を作るなら、合同会社と株式会社のどちらが安いですか?
合同会社です。電子定款で作る場合、合同会社は登録免許税6万円だけで設立できます。株式会社は登録免許税15万円に定款認証手数料1万5,000円(資本金100万円未満などの条件を満たす場合)と謄本代がかかり、差は10万5,000円以上になります。
合同会社と株式会社で、法人税や住民税は変わりますか?
変わりません。法人税の税率は資本金1億円以下の普通法人として同じ扱いで、年800万円以下の所得に15%、超える部分に23.2%です。法人住民税の均等割も資本金等の額と従業者数で決まるため、資本金1,000万円以下・従業者50人以下なら、どちらも標準税率で年7万円(道府県民税2万円+市町村民税5万円)です。
株式会社だけにかかる毎年の手間は何ですか?
決算公告と役員の任期管理です。株式会社は定時株主総会のあと貸借対照表を公告する義務があり、官報に載せると掲載料がかかります。また取締役には任期があり(原則2年、株式譲渡制限のある会社は定款で最長10年)、任期が来るたびに役員変更の登記(資本金1億円以下なら登録免許税1万円)が必要です。合同会社にはどちらもありません。
決算公告をしないとどうなりますか?
会社法976条で、公告を怠ったときは100万円以下の過料の対象とされています。官報の掲載料を避けたい場合は、貸借対照表を自社サイトなどで5年間公開し続ける方法(会社法440条3項)も法律で認められています。
合同会社で作ったあとに株式会社へ変えられますか?
変えられます。組織変更という手続きで、総社員の同意、官報での公告と1か月以上の債権者の異議申述期間を経て、株式会社の設立登記をします。この登記の登録免許税は資本金の0.15%で、3万円に満たなければ3万円です。ほかに官報公告の掲載料などがかかります。
合同会社は取引先から信用されにくいですか?
測れる形の根拠はありません。参考になる数字として、法務省の登記統計では2025年の設立登記が株式会社100,165件、合同会社45,161件で、新しく作られる会社のおよそ3社に1社が合同会社です。ただし特定の取引先や業界が株式会社を条件にしている場合は、それが優先します。